常々むぎょ劇場

常々むぎょのブログ別館。小説置き場になる予定

神の処刑【即興小説トレーニング】

 一分の光も入らぬ地下。松明の炎が舐めるように照らす中、牢獄の檻が開かれる。痩せこけた身体に伸びた体毛を乗せた人間が、看守に引きずられて檻の外に出た。
 石の怪談は、彼の裸足から容赦なく体温を奪っていく。役人のブーツはぴかぴかに磨かれており暖かそうだったが、最早うらやましいと思う気すらない。ぺた、ぺた、カツン、カツン、2つの足音が、ひやりとした地下牢に響く。
 
 
即興小説トレーニングを手直ししたものです)

神の処刑

 

 一分の光も入らぬ地下。松明の炎が舐めるように照らす中、牢獄の檻が開かれる。痩せこけた身体に伸びた体毛を乗せた人間が、看守に引きずられて檻の外に出た。
 石の怪談は、彼の裸足から容赦なく体温を奪っていく。役人のブーツはぴかぴかに磨かれており暖かそうだったが、最早うらやましいと思う気すらない。ぺた、ぺた、カツン、カツン、2つの足音が、ひやりとした地下牢に響く。
 やがて、鋭い日光が老人の目を焼いた。半世紀ぶりの外界は、様々な刺激で彼の身体を蝕んだ。面食らう暇すらなく、看守は彼を目的地に追いやる。すりばちのような形をした広場には、国中の人間が集まっていた。彼らは老人を見ると、やんややんやと囃し立てた。
「お前の罪を覚えているか」看守が問うた。
「……覚えて、いますとも……」老人はしゃがれ声でゆっくりと発音した。
「私は、神を、騙りました」
「騙り? 違うな。お前はある日突然空から舞い降りて、数々の奇跡を見せ付けただろう。お前は今でも疑いようがない、唯一神だ」
「では、なぜ神の私を牢屋に閉じ込め、処刑するのです」
 看守は嘲るように答えた。
「全ての市民、全ての人間を救えない神だったからだ」
 
 
 
 了
 
お題:神の罪人 制限時間:15分 文字数:491